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衛生対策
No. 26 ~若年者に対する制裁と支援~
昨日、元少年に対する裁判員裁判の死刑判決が初めて確定するとのことが報道されていました。
これまでにも、少年(20歳未満)が犯した犯罪について、死刑判決が確定した事件というのは例がないわけではありませんが、裁判員裁判で少年に対して死刑を言渡し、それが確定するという事例が初ということで大きく報道されていたようです。
この件に関する報道各社の姿勢は様々だと思いますが、被害者感情に配慮して厳罰化の流れが定着する、あるいは一層進むといった論調もありましたし、これまでの匿名報道(少年法の趣旨に配慮したもの)から、実名報道に切り替え、顔写真なども掲載した報道機関も多数だったと感じています。
刑罰制度の在り方とか、死刑制度の存否の是非とか、このような場で軽々に触れられるものではありませんので、ここでは、私の雑感しか述べませんが、若年者の犯した過ちに対する制裁の在り方とそうした過ちを予防するための支援の施策や制度と、やはり両方ともに議論をして、少しずつでも改良していかなければならないのではないかと感じています。
今回の件で、私があえて若年者に対する支援の施策や制度についても議論しなければなどと考えているのは、これまでもこのページで何度か触れてきたことのある、若年者、特に子どもの貧困、環境の劣悪化が深刻な社会問題だと思っているからです。
少年犯罪に対する厳罰化、あるいは、少年法改正問題において、若年者であっても、犯した犯罪が重大なら、大人と同じように処罰すべきだという意見が説得力を持つのもわかりますし、被害者からすれば、加害者が少年か、それとも、成人かというのは、むしろ、関係ない、犯した罪に対して適正な処罰と制裁を求めるというのも、ごく自然な感情だと思ってはいます。
ただ、自分で生きていくための経験を積み、善悪の判断を学び、人格を形成し、他者とのコミュニケーションの手段を学び、そのほか社会に出るための様々な準備をする子どもの時代に、多くのものは与えられず、チャンスも乏しい中で育つ子どもたちをそのままにしておいて、悪いことをしたら大人同様に処罰するというのは、率直に薄情だと感じるのと、問題の根っこはそのままにして、社会にとって危険な存在は目の前から排除するというその場しのぎにしか思えないというのも、正直な感想なのです。
もちろん、貧困の中で育ったから、環境が劣悪だったから、必ず素行が悪くなるとか非行に走る、さらには犯罪に手を染めるなどと言っているわけではありません。そうした中からでも、おかれた環境の中で一生懸命考えて、育ち、社会で活躍している方もたくさんいると思います。
けれど、そうではない子どももいます。貧困、虐待等、劣悪な環境の中で育ち、学習する機会もつかめなかったり、進学したり、より良い環境を手に入れるための職に就くということもうまくできないままの子どもたちがたくさんいるのも事実だと思います。
何をもって劣悪な環境というのか、どういう環境なら良好というのか、もちろん、程度の問題ということにはなってくると思いますが、子どもが育つうえで、最低限の衣食住、学校に行って学ぶ環境、そして、何よりも、見守ってくれる家族等の存在が大きいと思います。
ところが、こうした環境が与えられず、チャンスも、選択肢もあまりないまま(仮にあったとしても、そのチャンスをつかむこと自体がよほど困難なまま)、ドロップアウトしていってしまう子どもたちがいるなら、そうした状態をそのまま見過ごすことは、社会経済的にも大きな損失(労働人口という面でも、これからの社会保障制度を担っていく納税者という面でも)だと思いますし、何も教えないで、手ほどきしないで、期待するとおりにできなかったら叩くというのと同じような気がして、大人の、それも比較的恵まれた大人のエゴではないのかと思ってしまうのです。
ですから、若年者(もちろん、どこで線引きするのかという問題はありますが)の犯す過ちに対する制裁の在り方と、そうならないための支援の施策や制度の在り方とは、やはりセットで考えていく必要があるのではないかと強く感じたニュースだったのです。
(2016.6.17)