衛生対策
少し前の話になりますが、11月の中旬に、母校である大分県立中津南高等学校で、「職業人に学ぶ」という演題でキャリア教育の講義を行ってきました。2010年から毎年お受けしている講義なので、今年で6回目でした。
内容は、毎年、弁護士という仕事の概要と特色(他の仕事との異同)、必要な能力や心構えなどをお話しているのですが、今年も、事前に生徒から
いただいた質問事項については全て書面で回答を作り、また、レジュメも、果たしてわずか50分で話しきれるだろうかというほど大部のものを用意して臨みました。
しかし、結果は、惨憺たるものでした。
もともとあがり症なのは自覚しているので、それで毎年大量のレジュメを作成して臨んでいるのですが、今年は、なるべくレジュメを読むのではなく、話す内容を事前に頭に入れて、忘れたら、項目だけ見直して対応しようと考えていました。しかし、気負ったせいか、例年よりもひどく緊張してしまい、結局、最初からレジュメを見ながら話した方がよっぽどましだったという結果に終わってしまいました。
まさに後悔先に立たずなのですが、何度やっても、人の前でお話をするというのには慣れません。もちろん、普段の相談の場とか、法廷で尋問や弁論をするとかいう場面では、仕事ですからさして緊張はしませんし、緊張しても適度な緊張感という感じで実践できていると思うのですが、聴衆を前にして一方的に話をするというのは、弁護士としての普段の仕事の場面とはどうも勝手が違い、緊張しすぎてしまうのです。
ですから、今回の件は、なんだか余計にトラウマになって、次の機会ではもっと緊張してしまうのではないかと内心びくびくしています。
他方で、昨日、著名な弁護士の講演を聞く機会があり、その立て板に水のような、まさに流れるような話の展開とわかりやすさに改めて感銘を受けました。
その弁護士というのは、今年の安保関連法制の審議において、参議院で参考人として意見陳述もした伊藤真さんであり、この伊藤さんは、若いころから大手司法試験予備校で人気講師として名を博し、その後は自ら司法試験予備校を興して法曹養成に長年あたってきた人です。その他に法学館憲法研究所という組織も立上げ、1票の格差是正訴訟(議員定数不均衡違憲訴訟)など様々な憲法訴訟に関与し、日弁連の憲法問題対策本部副本部長も務めておられます。私も過去に何度か講義を聞いたことがあるのですが、とにかくわかりやすく、そして、聴衆を前向きに、むしろ熱くさせる特別な能力を持っている方です。
その講演の内容には別の機会に触れるとして、今回久しぶりに伊藤さんのお話をお聞きして、どうしてこんな講演ができるのだろう、逆にどうして私は講演となると緊張しすぎてしまうのだろうと改めて感じました。
もちろん、人には向き不向きもあるとは思うのですが、それにしても、この差は何だろうと考えると、やはりモチベーションとかメンタル面が大きく関わっている気がします。
この機会に、今後講演などで失敗しないための方法を、むしろ、より楽しい講演をするための方法を、もう一度模索し、再構築してみようと思った一日でした。
(2015.12.7)