衛生対策
1 昨日の毎日新聞朝刊で、全国各地の点字ブロックがデザインや景観に対する配慮といった観点から、視覚障碍者にとって不便なものになっているのではないかという記事を目にしました。
私はこれまで、点字ブロックといえば「黄色」と思い込んでいたのですが、実は色に決まりはなく、「周囲の路面と容易に識別できる色」であればいいのだとか(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(いわゆるバリアフリー新法)第10条、国土交通省「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令第34条)。
2 そのため、前記記事では、例えば、岐阜県高山市、石川県金沢市、京都府などで、黄色ではない点字ブロックが既に設置されていて、視覚障碍者協会などから事前に、あるいは事後に改善の申入れがあるものの、なかなか実現には至っていないとのことでした。
しかし、前記の自治体はあくまで一例であって、そこだけが特別の問題を抱えているということではないと思います。
現時点で視覚や聴覚その他の障害を抱えていない人の側から見れば、グレーの歩道には濃淡の差はあってもグレー系の点字ブロックの方がしっくりくる、茶色系の歩道であれば同じく濃い茶色の点字ブロックの方が違和感が少なく、デザイン性に富み、観光浮揚にもつながるのではないかと考えがちかもしれません。
しかし、これらは、歩道等を歩く際に現時点では点字ブロックを必要としていない側(私を含めて)のエゴにすぎないのかもしれません。
3 なんとなく気になって、調べてみたところ、社会福祉法人日本盲人会連合のHPに行き当たりました。
そこでは、現状、点字ブロックの問題点や課題として、
(1)他の人の障害になる
(2)種類のばらつきによる識別の困難
(3)点字ブロックの上の障害物
が挙げられていました。
正直驚きました。
なぜなら、視覚障碍のある方の団体が一番最初に挙げた問題点が、「点字ブロックが他の人の障害になる」という点だったからです。
仮に私がその立場だったら、間違いなく上記のうち(2)と(3)を一番に挙げると思います。それは、現に困ることだからです。
しかし、HPでは、他の人の障害になるとして、高齢者や車いす利用者、バギー利用者に対する配慮、さらに雨天時の滑りやすさなどの問題点が挙げられているのです。これは、他の障碍を抱える方たちや現時点で障碍がなくても降雨等によりスリップし、けがをする恐れを想定して、それらを改善し、共に生きるための提言だと思うのです。
そうであるからこそ、私は、より強く上記(2)と(3)の問題点を早急に改善する必要があるのではないかと感じました。
先のHPで、点字ブロックの形状は、視覚障碍のある方が足で触れ、その場所の情報を読み取るものということも初めて知りました。
そうであれば、その形状は統一したほうがいいに決まっていますし、色は、弱視の方でも判別しやすいように、濃淡による区別などではなく、判別しやすい色(黄色等)の方がいいに決まっています。
歩道上で点字ブロックを塞ぐ駐車車両や自転車などに対しても、それがどんなに危険なものであるかを知ってもらう機会を増やせないものでしょうか?
4 冒頭で、点字ブロックの色にこだわらない、むしろ、デザイン性優先でもいいのではないかという感覚は、現時点で障害を抱えていない側のエゴではないかというような意見を書きましたが、このような例はほかにいくらでもあり、そのたびにエゴなどと言われたらかなわないというご意見をお持ちの方もおられると思います。
もちろん、私自身、全ての場面で利便性等を捨てて我慢を求めているわけでは決してありません。
しかし、点字ブロックの色やデザインによって得られる景観とか観光浮揚などの価値と現に視力等に障碍を抱えている人の安全とをそもそも同列に扱っていいのか、多数の人が心地いいと思えることを多数決で優先していいのかということは、きちんと考え、想像し、議論したほうがいいと思います。なぜなら、今は何も障碍を抱えず、何も不便を感じていない人だって、いつかは年を取り、仮に視力でなくても、他の人の力添えや手助け、何らかの配慮を必要とするときがくるのですから。
5 私たちは民主主義社会に生き、多くの事柄は多数決で決定していますが、民主主義は単なる多数決ではなく、熟議の末に決定するものであるということを再確認し、多数派の欲求の背後で不便な思いを強いられる少数者がいるかもしれないということには常に想像をめぐらし、感覚を研ぎ澄ませて、議論をしてもいいのではないでしょうか?
最後に、最近私が経験した少し恥ずかしく、嬉しい出来事をお話しします。このようなことを書いている私自身、勉強させられることが先だってあったからです。
それは、JR日豊線の博多発大分行の特急列車に乗っていた時のことでした。JR日豊線は小倉駅で列車の進行方向が変わる(前後が逆転する)ため、座席を回転させなければならないのですが、その際、私の隣側の2人掛けの席に乗車していた高齢女性が手荷物が多かったためか、少し手間取っていました。私としてはあまり大変そうだったらお声がけをしようかと気になって見ていたのですが、そうこうするうちに、小倉駅から乗車する方がたくさん入ってこられました。それで、私も立ち上がり、その高齢女性にお声掛けしようとしたその瞬間、私の後ろの席に座っていた若い男性が、まさに、「さっ」という感じで高齢女性の手荷物などを持ち、促して座席を回転してあげたのです。私としては、一瞬後れを取ったなと恥ずかしくもなったのですが、それよりも、その青年の素早い行動とさりげなさに何だかさわやかな気持ちになりました。もしかしたら、その青年も手助けするタイミングを見計らっていたのかもしれませんが、あっという間に立ち上がり、さりげなく手助けをした方を見て、嬉しくなりました。
配慮とか思いやりとか、その前の気がつくということは、きっとこういうことの積み重ねなのだと感じた一場面でした。
(2017.11.20)