衛生対策
現在問題となっている日本学術会議に関する任命拒否の問題について、私が支部長を務めている自由法曹団大分県支部が、先日、下記のとおり、抗議声明を発しました。
たまたま私が支部長をしている関係で私の名前で発出していますが、実際に起案をしてくれたのは先輩です。
この問題は、学問の自由・思想良心の自由の根幹に関わるものであって、先の検事長定年延長問題や検察庁法改正問題にも比肩するほど重大な問題であるにもかかわらず、巷では日本学術会議の組織等の問題に話がすり替えられようとしています。
しかし、組織運営等に問題があるのなら、それはそれで正面から改革を議論すればいいのであって、本件とは全く別の問題です。
本件は、学問の自由・思想良心の自由に委縮効果を与え、回復困難なほど致命的な傷をつける危険が大であるとともに、何十年も前から確立した解釈である「首相の任命権は形式的なもの」であって、拒否権はないという前提を、法改正はもとより、国会審議さえも経ずに内閣の独断で変更したということを意味するものであって、「内閣の独裁ではないか」、「国会が国権の最高機関であることを無視した、民主主義に抵触するものではないか」という大きな問題も含んでいます。
是非とも、多くの方に問題意識を共有していただければと考えています。
(2020.10.13)
菅首相による学術会議会員任命拒否に断固抗議し、 直ちに推薦候補者を任命することを求める声明
1 日本学術会議は、本年10月1日、同会議が推薦した新会員候補105名の内6名について、菅義偉首相が任命を拒否したことを明らかにした。この任命拒否は、憲法の保障する学問の自由を侵害するものである。 2 日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし(日本学術会議法前文)、我が国の科学者の内外に対する代表機関であって(同第2条)、科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること、及び、科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させることという職務を「独立して」行うものとされている(同第3条)。 その会員は、日本学術会議が、すぐれた研究又は業績がある科学者のうちから候補者を選考して内閣総理大臣に推薦し(同第17条)、これに基づいて、内閣総理大臣が任命する(同第7条)とされているが、この任命に関しては、1983年(昭和58年)の同法改正の際の国会審議において、政府高官や国務大臣が、「首相による任命は形式的であり実質的なものではない」旨繰り返し答弁し、当時の中曽根康弘首相も「政府の行為は形式的なものとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えています。」(昭和58年5月12日参議院文教委員会)と明言した。 3 菅首相が内閣官房長官を務めていた安倍内閣は、内閣法制局への人事介入を通じて、憲法解釈を一方的に変更して集団的自衛権の行使を容認し、安全保障関連法の制定を強行した。その後も、安倍内閣は、最高裁判所裁判官にそれまでの慣例を排して日本弁護士連合会の推薦によらない者を任命する等、恣意的な人事を強行してきた。さらに、本年に入っても、検察人事に違法に介入して検事長の定年を延長した上、さらなる検察人事への介入を可能とする検察庁法「改正」案を国会に提出した。同法案は、多くの批判を受け、廃案となったばかりである。 今回の任命拒否は、法改正時の政府答弁を無視するものであり、菅首相は、「法に基づき適切に対応した。」としか述べず、内閣府官房長も、「総合的、俯瞰的観点から任命を行った。」としか、説明しない。任命を拒否された会員候補者は、安全保障関連法や特定秘密保護法などで、政府の方針に異論を示してきたところであるが、そのために任命を拒否されたのであれば、学術研究及びその発表について大きな委縮効果を生み、政権に対し批判的なもの程自由を奪われることになる。これは、憲法第23条が保障する学問の自由の重大な侵害であり、自由な議論を前提とする民主主義の基盤を破壊する暴挙である。 4 したがって、自由法曹団大分支部は、菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に対し、断固抗議するとともに、直ちに同会議の推薦した候補者を会員に任命することを求める。 2020年10月9日 自由法曹団大分支部 支部長 中山知康 |